おせっかいで笑顔の輪

1  慰謝料と財産分与の違い
2  財産分与と婚姻費用の違い
3  財産分与と養育費の違い
4  財産分与にはどんな意味が隠されてるの?
5  財産分与の対象となるのはどんな財産?
6  財産分与を決めるまでの流れ
7  財産分与の期限
8  様々な家族形態別の注意点 あなたの家族はどんな家族?
9  気をつけなくてはいけない財産
10 共有財産を相手が勝手に処分したとき
11 財産分与で絶対損をしたくない!

まず、財産分与とは何でしょう?―知っているようで知らないこと


1 慰謝料と財産分与の違い
慰謝料と財産分与をよく混同している方がいらっしゃいますが、この2つは全く別物です。
慰謝料とは、相手方から受けたご自身の精神的損害に対して、それを金銭に換算し,その損害を償うためのものです。たとえば、配偶者が不貞行為をし、それにより、精神的に傷ついた場合とか、長年のモラハラ行為により、うつ病になってしまったとかの場合に発生します。
一方、財産分与とは、夫婦が婚姻中に共同で築いた財産の分配を目的とするもので、慰謝料とは異なり、夫婦に共有の資産がある限り、行うべきものです。また、共有財産の額によっては、離婚慰謝料よりも高額の金員を得られる可能性が大いにあります。

2 財産分与と婚姻費用の違い

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婚姻費用と財産分与の一番大きな違いは、婚姻費用は離婚に至るまえに発生するもので、財産分与は離婚後に発生するものです。婚姻費用とは夫婦の扶助義務から生じる婚姻中の生活費のようなものです。



3 財産分与と養育費の違い

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子どもを監護する親(監護親)は、子どもを監護していない親(非監護親)に対して、子どもを育てていくための養育に要する費用を請求することができます。この費用が「養育費」というものです。離婚をしたとしても親として当然支払ってもらうべき費用ということになります。

4 財産分与にはどんな意味が隠されてるの?
  - 財産分与の要素 -


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財産分与は、夫婦に共有の資産があれば、有責配偶者(夫婦のうち離婚に至る原因を作った側)であっても受け取ることができます。
そして、財産分与は、主に以下3つの側面があります。
 ① 清算的財産分与
 ➁ 扶養的財産分与
 ③ 慰謝料的財産分与
財産分与は、まず、①の清算的財産分与の考え方が根底にあります。したがって基本的に、分与の割合は5:5です。それは、あなたが専業主婦であっても、パートで働いてる場合であっても、メインで働いている方であっても変わりありません。なぜなら前述のとおり、財産分与とは婚姻期間中に夫婦で築いた財産を分け合う(=清算する)ことを指すためです。
ですので、この清算的要素の財産分与の割合は夫が不貞行為をしたなどの理由によって離婚する場合であっても変わりません。「相手が悪いのだから慰謝料のほかにも多く財産を分与してほしい」と考えても、裁判では認められないケースがほとんどです。
ただし、お互いが同意さえしていれば、その割合が5:5ではなく、ご自分のほうが多くもらえる内容であっても問題ありません。

つぎに、➁の扶養的要素とは、離婚後の生計維持のため、財産を分与することです。
離婚すると、夫婦間で扶養すべき義務はなくなります。したがって、離婚後にまで一方が他方の面倒をみなければならない理由というのは、本来ありません。
しかし、婚姻中の性別役割分担の結果として夫婦間で財産形成能力に差ができたのだから、離婚後の生活保障の形で精算するのが公平だというような考え方があります。
最高裁昭和46年7月23日判決は、財産分与について、夫婦共同の財産の精算とともに「離婚後における一方の当事者の生計の維持をはかることを目的とする」と判示し、財産分与には扶養的な要素があることを認めています。

 

最後に、③の慰謝料的要素と先ほどの慰謝料との関係が問題となります。先ほど、慰謝料と財産分与は別物と言っていたのに、どうなっているの?との疑問が生まれます。
判例は財産分与において離婚慰謝料的要素を考慮することができることを理由として別途の離婚慰謝料請求が妨げられることはありません。と言っています。 もっとも、財産分与において離婚慰謝料的要素が考慮された後に別途離婚慰謝料請求した場合には、先になされた財産分与の事実は離婚慰謝料請求の判断において考慮されることになります。具体的には、財産分与により精神的苦痛は慰謝されたものと評価されれば重ねての慰謝料請求は認められず、財産分与によっても精神的苦痛を慰謝するに足りないと認められる場合には慰謝料請求は認められることになります(前掲最高裁判所昭和46年7月23日)。
つまり、先の財産分与によっても精神的苦痛を慰謝するに足りないと認めるべき具体的事実を主張立証することにより、別途慰謝料請求が認められる可能性があることになるのです。


 

5 財産分与の対象となるのはどんな財産?

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離婚の際に財産分与の対象となるのは、婚姻生活を送る上で夫婦が互いに協力し合って築いた財産だけに限られます。したがって、夫婦のそれぞれが保有するとみなされる個人的な財産は含まれません。
夫婦が婚姻中に共同で築いた財産を「共有財産」、夫婦のそれぞれが保有する個人的な財産を「特有財産」といいます。
<共有財産とされやすい資産の例>
・婚姻後購入した不動産
・保険料
・退職金
・現金や預貯金
・住宅ローンや教育ローンなど、婚姻生活のためにした借金

<特有財産と考えられるもの>

 ・婚姻以前から保有する財産
 ・親族から相続した財産
 ・自分の特有財産で購入した物、プレゼントされたバッグやアクセサリー等
 ・車や洋服、飲み代など、個人の娯楽や物欲を満たすために行った借金

6 財産分与を決めるまでの流れ

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(1)共有財産をどのように分割するかは、まず、すべての財産を出した上で、夫名義や妻名義のものがあればそれは特有財産なのか、共有財産なのかを詳細に確認し、どのように分割するかを決定していく必要があるでしょう。

(2)離婚前に財産分与の話し合いをする場合
財産分与は、離婚するときに決めておくべき事項のひとつです。そこで、親権や養育費、慰謝料などの問題同様、まずは夫婦間の話し合いで決定していくことになります。話し合いで決定したら、その内容をまとめた離婚協議書を作成するだけでなく、強制執行認諾条項をつけた公正証書にしておくことを強くお勧めします。

他方、話し合いが決裂した場合、家庭裁判所へ夫婦関係調整調停(離婚調停)を申し立てることになります。離婚調停では、離婚するか否かだけでなく、親権、財産分与の詳細などについても、調停委員を介して話し合うことができます。

それでも互いに合意できなければ、調停不成立とした後に離婚審判という手続きを申し立てる方法と、離婚訴訟(裁判)を提起して、その中で離婚の付随問題として財産分与に関しても争うという方法があります。

公正証書や調停調書、審判書・裁判の判決書は、法的強制力を持つ公文書です。万が一相手が約束を守ってくれない場合は、強制執行などの措置をとることができます。
なくさないように!!!

7 財産分与の期限

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財産分与を相手に請求できる期限は法律で「離婚の成立から2年」と定められています。財産分与については、可能な限り離婚前に取り決めをしておくことをお勧めします。

8 様々な家族形態別の注意点 あなたの家族はどんな家族?

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子どもがいる家族

夫婦の間に子どもがいる場合は、貯金、学資保険等、子どものための財産があるご家庭も多いでしょう。預貯金は、名義を子どもの名前にしていた場合であっても、実際払ったのが親で、実質的に貯蓄しているのが親であれば、財産分与の対象となります。学資保険も同様です。しかし、子名義の貯金のうち、お小遣いとして子が自由に処分することを許されたお金や、祖父母がその子自身に対して贈与したお金などは、財産分与の対象にならないので要注意!
学資保険を分与する場合は、「解約して分与する」、もしくは、「解約せずに離婚時の貯蓄金額によって分与する」、の2通りの方法があります。一般的には、親権もしくは監護権を有する方が、引き続き保有することが多いですが、解約して分与する場合は、積み立てたお金よりも解約返戻金が少なくなってしまう点に注意しましょう。また、解約しない場合は、離婚後の保険料の支払いについても協議が必要です。

専業主婦の家族
一般的には専業主婦の家庭では、財産の名義が夫になっていることが多いです(例えば、不動産が夫の単独所有になっている、預貯金の名義が夫等)が、名義がどちらかに関わらず、原則として財産分与の割合は5:5です。なぜなら、専業主婦であっても、夫が毎日仕事に専念できるように家事・育児を担当していたことが財産の形成に貢献しているとみなされるからです。
しかし、夫側から「自身の貢献のほうが多いから妻の割合を下げるべき」と主張されるケースもあります。例外的に、妻側の浪費や、夫側の特殊な才能がある場合などは、割合が減らされることもあります。

共働きの家族
共働きの場合も、原則として夫婦の収入差によって財産分与の割合に差がつけられることはありません。しかし、上記と同様、一方が特殊な才能による職種に就いている場合は、その事情を考慮して分与の割合が決められることもあります。

結婚期間が長い家族―熟年夫婦
熟年離婚の場合は、財産分与の対象となる資産の額が大きくなることも多く、また、資産形成の方法が多岐にわたる事例が多いです。したがって、熟年離婚の財産分与は、すべての財産を正確に把握しておくことが特に重要です。(財産を隠されてしまうケース多)
預貯金、有価証券であれば、預け入れている銀行や証券会社の名称、支店名を把握しておくことが非常に重要です。夫宛に送られてくる郵送物の発信元をメモしておく、可能ならば、メールもチェック等が今後、役にたちます。不動産の場合は、役所から届く 固定資産税の納税通知書に、所有不動産が記載されていますので、財産分与の前に確認しておく必要があります。財産分与は、請求する側がある程度財産を把握して請求しなければ、受け取るべき金額を受け取ることができませんので注意しましょう。
また、財産分与とは別の手続きになりますが、年金分割の手続きも忘れずに行いましょう。

9 気をつけなくてはいけない財産

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家・マンション・土地

結婚した後に購入した居住用のマンションや戸建て住宅を所有している場合は、それがたとえ夫名義のものであっても、財産分与の対象になります。そこでまずは、不動産会社等に対象の住宅や不動産がいくらかを査定してもらいましょう。
住宅ローンを完済している場合は、その不動産の価値をそのまま財産の額と考えて分与していくことができます。家を売却する場合は、売却した金額を財産の額とすることが多いでしょう。売却せずにどちらか一方が住み続ける場合は、査定金額の2分の1相当額のほかの財産を、家から出る相手方に渡すということも考えられます。
住宅ローンが残っている家の財産分与は少し複雑です。査定金額よりも住宅ローンの残債が少ない場合をアンダーローンといいますが、この場合は、査定金額からローンの残債を差し引いた金額を財産分与の対象として考える場合が多いです。
一方、査定金額よりも住宅ローンの残債が多い場合を、オーバーローンといいます。この場合は、その住宅がマイナスの財産ということになりますが、マイナスとなる部分を2人で分け合うこともありますし、ローンの支払いについての不都合を避けるため財産分与の対象から外すということも考えられます。家以外に預貯金等の資産がある場合は、プラスの財産から、オーバーローンとなっているマイナスの部分を差し引いて財産分与の総額を算定することができます。
ローンが残っている住宅を財産分与する場合、問題となるのが、住宅ローンの返済です。住宅とそのローンのいずれも夫名義というような場合、ローンを完済する前に名義を変更することは難しいと考えられます。その場合は、夫がローンの返済をすること、ローンを完済したら名義変更等の手続きを行うことを約束した上で、公正証書を作成しておく必要があるでしょう。


退職金

退職金も財産分与の対象です。支給された退職金はもちろんのこと、近い将来支給される可能性が高い退職金も財産分与を請求することができます。たとえば、定年が60歳で現在の年齢が58歳、勤続30年というような場合、数年以内に退職金が支給される可能性が高く、これを財産分与の対象とする余地が十分にあります。
また、近年の会社は役職定年制度を採用していることが多く、60歳前に退職金が一旦支払われることがあります。会社ごとに対象年齢もまちまちです。可能ならば、調べておく方がいいでしょう。
なお退職金は、婚姻期間中の就労分だけが財産分与の対象です。

借金
婚姻生活中につくった借金は、財産分与の際に考慮されます。しかし、家を購入するためなど夫婦の生活のためになされた借金のみが対象です。夫婦の一方だけが過度の遊興、ぜいたく品の購入やギャンブルなどをするために作った借金は、財産分与において考慮されません。
生活費等のための借金は、プラスの財産から差し引く形で財産分与を行います。例えば、プラスの共有財産が3000万円、借金が500万円という場合は、差し引いた2500万円を分与します。

税金がかかるケース
現金や預貯金を分与する場合、譲渡所得税がかかることはありません。しかし、有価証券や不動産等の評価金額が増減する財産を分与する場合には、譲渡所得税がかかることもあります。
離婚時の評価金額が取得時よりも高くなっている場合は、値上がりによる利益から経費等を差し引いた金額が譲渡所得となり、譲渡所得税がかかります。
贈与税は、原則として財産分与の際にはかかりませんが、一方に分与される額がもう一方に比べてかなり大きいなど、財産分与にかこつけた贈与と判断される場合や、相続税を回避するための生前贈与であると判断される場合は、贈与税を課税される可能性があります。

10 共有財産を相手が勝手に処分したとき

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調停前の処分の申請
財産分与請求の調停が成立する前に、共有財産である土地や建物を売却したり、預貯金を使い込まれたりする心配があれば、家庭裁判所へ「調停前の処分」を申請しましょう。申請が認められれば、相手方へ財産を無断で売却したり消費したりしないように命じるなど、適切な処分がなされます。また、相手方がこの処分に違反した場合には、10万円以下の過料が課せられます。

審判前の保全処分申請
「調停前の処分」には過料の制裁があるものの、法的拘束力まではなく、強制執行による財産差し押さえなどができません。そのため、調停前の処分には、相手方に対する心理的な圧力程度にしかならないというデメリットもあります。
勝手に財産を処分される危険性が高い場合は、財産分与請求の審判を申し立てるとともに、「審判前の保全処分」の申請をしましょう。家庭裁判所が財産保全の必要性・緊急性を認めた場合は、仮の財産差し押さえなどの処分を命じてくれます。
財産分与で損をしない!
離婚したいと伝える前に共有財産を把握しましょう
夫の預金通帳の場所や、保有する株式などの有無・具体的な金額といった事情をご存じでしょうか。夫婦の共有財産にあたりそうな財産としてどういうものがあるのか、そしてそれがどれくらいあるのかを、離婚する前にしっかりと把握し、資料のコピーなどをとっておきましょう。把握する前に離婚を切り出してしまうと、夫が財産を隠そうとするケースが多いです。
共有財産を隠されたまま知らずに財産分与をすると、受け取れる財産が減ってしまいます。離婚後に調査しようとしても、別れた相手の財産の調査は非常に難しくなるものです。可能な限り、離婚を切り出す前に財産の全貌を把握し、資料のコピーなど証拠を手元に残してあったほうが、有利に話し合いを進めることができます。

相手が離婚を強く希望しているケースや、相手が有責配偶者である場合
たとえ相手が有責配偶者であろうと、財産分与の原則としては、前述のとおり5:5で分割することになります。しかし、双方が合意した場合には、その割合はどのように決めてもよく、たとえ10:0であっても、何の問題もないです。
そのため、相手が離婚を強く希望しているケースや、相手が有責配偶者である場合などでは、財産分与の増額を離婚の条件にすることも有効な手段といえます。たとえば、慰謝料を財産分与の中に考慮して、財産分与を多く受け取ることも可能です。


11財産分与で絶対損をしたくない!

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公正証書を作成しましょう!
公正証書とは
公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公文書です。離婚で財産分与を行う際は公正証書を作成しておくべきです。離婚の際の公正証書には、財産分与、慰謝料、親権等の諸条件を記載しておきます。
公正証書の原本は、公証役場に保管されるため、原本が偽造されたり破棄されたりする心配がありません。

信用力が高い
公正証書は、公証人という専門の公務員が作成する公文書です。私文書である離婚協議書も契約書としての意義はありますが、公文書のほうがその信用力は高くなります。双方の署名捺印がなされている上に、公証人の署名捺印もありますので、「偽造だ」などという言い逃れはできません。また、法的に無効になることもほとんどありません。

差し押さえをスムーズに行うことができる
公正証書を作成する際、強制執行を認諾する旨の条項を付け加えておくことで、記載された約束が守られなかった場合に直ちに強制執行を申し立てることができるようになります。このような公正証書を、執行認諾文言付き公正証書といいます。
この公正証書は、法的にいえば強制執行するために必要な「債務名義」にあたり、訴訟を提起することなく相手の財産や給与を差し押さえることが可能となります。法改正によって、相手の財産の把握が容易になり、財産の差し押さえがしやすくなりましたが、その際も「債務名義」は必要です。財産分与を確実に実現するためには、公正証書の作成が欠かせません。

 

離婚協議書・公正証書の作成をサポート
当事務所は離婚協議書・公正証書作成のサポートも可能です。
是非、お気軽にこちらへご相談ください

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